こんな記事が入ってきました。
世界初の「完全」人工光合成に成功 豊田中央研究所(msn産経ニュース)
プレスリリースはこちら。
http://www.tytlabs.co.jp/japanese/news/press/20110920_press.pdfノーベル化学賞を受賞した根岸さんが人工光合成の研究に力を入れると発表した時の当ブログの記事
人工光合成は既に多くの研究者が取り組んでいる分野です今回報道された内容をまとめると次の通りです。
・水と二酸化炭素と光から1つの系で違う物質を作り出した
・半導体と有機金属という2つを組み合わせて1つの触媒として使うという素晴らしい発想
今回のニュースで産経新聞が素晴らしいのは「完全」と強調してるところです。僕の記事でも書いてるとおり人工光合成はだいぶ長く取り組まれており、水を酸素と水素に分解する事や、二酸化炭素を他の物質に変換する事自体は既に成功しています。
しかし、そのお互いを1つの系(1つのフラスコの中とでも理解してください)において連続させる事ができなかったのが課題の1つでした。
この辺は平たくいっちゃうと水を分解する条件と、二酸化炭素を別の物質に変換する条件が同じにできなかった、という感じです。
それを今回の豊田中央研究所の報告では、二酸化炭素を別の物質に変換するための有機金属を半導体とくっつける+プロトン交換膜という仕切を組み合わせる事で、水を分解するのと同じ条件で作動するようにしたのです。だから「完全」。(条件的なことを考えると本当の意味での「完全」ではないと思いますが。)
半導体と有機金属を組み合わせて1つの触媒として使うのは目から鱗、あるいはコロンブスの卵かという衝撃を素人ながらに受けました。
で、この報告が何を意味するかっていうと、外部から供給されるエネルギーを殆どつかわずに工業的に有用な物質を作れるようになる可能性が生まれたという事ですね。有る程度晴れてる日限定とはなりますが、水を適当な容器に放り込んで屋外に放置しておくだけで、カルボン酸(酢酸の仲間)やアルコール類が作られていくという事ですね。
今回つくられたのは蟻酸という事で少々物質としては微妙感はありますが、この辺は触媒の工夫でどうにか出来るのではないかと思います。せめてメタノールを作りたい。効率も上がると良いですね。
触媒の製造コストや触媒製造時のエネルギーや廃棄物がどうなるかという問題もありますが、人工光合成の研究が大きな一歩で前進したのは確かなのです。
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「完全な人工光合成」というと、僕としては塗料や壁材に上手く混入させれば雨がふった後光があたれば周辺の二酸化炭素が分解されるというあたりを想像します。あるいは晴れた日に水をばーっと掛けるとか。水と二酸化炭素があればどこでも分解できる様になるのです。誰もが想像した事のあると思われる、放って置いても二酸化炭素濃度が勝手に下がっていく状態が僕の理想です。
とはいえ、プロトン交換膜という一種の仕切が必要となる現状ではこれはまだまだ夢物語ですね。
過去の論文も今回の論文も読んでないのでアレですが、プレスリリースを読むに今回の報告の目玉は半導体と有機金属を1つの触媒として利用するという方法が一番のキモなのではないかと思ってます。